冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

退院

退院の日。

正臣は車で香世を実家まで送る為、
退院荷物を車まで運び込む。

正臣と暮らしていた記憶の無い香世は、
とりあえず実家に帰すべきだと思っている。
出来れば連れ帰りたいが無理強いはできない…。

でも、香世の父親は入院中一度も顔を出さず、実家に戻ったところで居場所が無いのではないかと、少なからず心配してしまうのだが…。

いろいろ理由をつけて連れ帰りたい気持ちもある。
要は、正臣自身が香世と離れて暮らす事が寂しいだけなのだ…。
そう思って1人苦笑いする。


香世が病室を一回りして忘れ物が無いか確認していると、パタパタと小さな足音が近付いて来る事に気付く。

続いて、ガラガラと扉を開ける音。

「お姉様ー!!」
香世が振り返ると同時に小さな弟が足元に抱きついて来る。

「龍ちゃん!」
香世もぎゅっと抱きしめて再会を喜ぶ。

「元気だった?龍ちゃんは大きくなったねー!」
3歳までの龍一の記憶しかない香世は弟の成長に驚き嬉しくなる。

続いて姉とマサが駆け付ける。
「龍一坊っちゃま、廊下は走ってはいけません。」
はぁはぁと息をしながらマサが言う。

< 206 / 279 >

この作品をシェア

pagetop