生徒会長さんの溺愛、とめられない。
第三章

俺だけのお姫様




葉月先輩と話せないまま。夏休みが終わって、二学期が始まった。


「よし。文化祭実行委員決めるぞー」


先生の言葉に、教室が少しざわついた。


休み明けのテストが終わって、次の楽しみは文化祭。

楽しみなはずなのに……気が乗らない……あはは。



「文化祭実行委員って当日ずっと働くんだろ? ダル……」

「真面目なんだし、大雅やりなよ」

「いやいや、生徒会役員がやりなよ。大雅は私と回るんだからっ」


大雅くん、翔平、夏帆ちゃんはいつも通り賑やかだ。


夏帆ちゃんと大雅くん、休み明けでもラブラブ……!


ネズミーランドが終わった後、2人は毎日のようにデートしていた。

昨日……夏休み最終日は、夏帆ちゃんと大雅くんに加えて、私と翔平も合わせて4人で勉強会をした。


葉月先輩のことで落ち込む私を励ますために、公園に行って走り回ったり、美味しいスイーツの食べ放題に連れて行ってもらったけれど、ますます罪悪感が募っていった。


遊園地の後から、葉月先輩とは連絡をとっていなくて、葉月先輩の頭の傷がどうなっているのかもわからない。


絶対嫌われた……。

夏休み中の私は、葉月先輩と向き合うのが怖くて、スマホを封印して勉強に明け暮れた。

おかげでテストはいつもより手応えがあるけど、明るい気持ちにはなれなかった。


よし。

今日、葉月先輩にきちんと謝ろう。


私はそう決意して、立ち上がった。


暗い気持ちのまま文化祭を迎えるわけにもいかない。


「雪、どこ行くの?」


急に立ち上がって教室から出ていく私に、夏帆ちゃんはポカンとしている。


「生徒会室!」

「え、なんで…?」


夏帆ちゃんは頭の上にはてなマークを浮かべている……というか、呆れている。


「じゃあ、文化祭実行委員は伊藤雪に決定だな」


夢中で駆け出す私の耳に、先生の言葉は一つも入ってこなかった。


「文化祭の出し物は、伊藤抜きで決めるぞー」


私抜きの話し合いで、劇の主役にさせられることも、このときはまだ知る由もなかった。




\次回、9/26 18:00 更新/
< 119 / 119 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop