生徒会長さんの溺愛、とめられない。
第三章
俺だけのお姫様
葉月先輩と話せないまま。夏休みが終わって、二学期が始まった。
「よし。文化祭実行委員決めるぞー」
先生の言葉に、教室が少しざわついた。
休み明けのテストが終わって、次の楽しみは文化祭。
楽しみなはずなのに……気が乗らない……あはは。
「文化祭実行委員って当日ずっと働くんだろ? ダル……」
「真面目なんだし、大雅やりなよ」
「いやいや、生徒会役員がやりなよ。大雅は私と回るんだからっ」
大雅くん、翔平、夏帆ちゃんはいつも通り賑やかだ。
夏帆ちゃんと大雅くん、休み明けでもラブラブ……!
ネズミーランドが終わった後、2人は毎日のようにデートしていた。
昨日……夏休み最終日は、夏帆ちゃんと大雅くんに加えて、私と翔平も合わせて4人で勉強会をした。
葉月先輩のことで落ち込む私を励ますために、公園に行って走り回ったり、美味しいスイーツの食べ放題に連れて行ってもらったけれど、ますます罪悪感が募っていった。
遊園地の後から、葉月先輩とは連絡をとっていなくて、葉月先輩の頭の傷がどうなっているのかもわからない。
絶対嫌われた……。
夏休み中の私は、葉月先輩と向き合うのが怖くて、スマホを封印して勉強に明け暮れた。
おかげでテストはいつもより手応えがあるけど、明るい気持ちにはなれなかった。
よし。
今日、葉月先輩にきちんと謝ろう。
私はそう決意して、立ち上がった。
暗い気持ちのまま文化祭を迎えるわけにもいかない。
「雪、どこ行くの?」
急に立ち上がって教室から出ていく私に、夏帆ちゃんはポカンとしている。
「生徒会室!」
「え、なんで…?」
夏帆ちゃんは頭の上にはてなマークを浮かべている……というか、呆れている。
「じゃあ、文化祭実行委員は伊藤雪に決定だな」
夢中で駆け出す私の耳に、先生の言葉は一つも入ってこなかった。
「文化祭の出し物は、伊藤抜きで決めるぞー」
私抜きの話し合いで、劇の主役にさせられることも、このときはまだ知る由もなかった。
\次回、9/26 18:00 更新/
