好き……その言葉が聞きたいだけ。【完】
あの時、彼女は私の言い分を聞いて納得したんだと思った。
だけど、実際は違った。
律じゃなくてお兄さんを選んだくせに、想ってくれてた律を傷付けたくせに、自分の都合で会いに来て、私や律の仲を壊そうとしてる。
そんな彼女が、私はたまらなく嫌いだ。
「……ねぇ律、鈴さんは……どうして律に会いに来るの? ずっと会ってなかったのに、どうして今になって来るの?」
「……鈴と兄貴は、ここ半年くらい前から色々揉めてるらしい。まあ、兄貴の女遊びが原因らしいけどな」
それで鈴さんは、律にどうして欲しいのだろうか。
私にはそれだけが理由で会いに来てるんじゃない気がする。
もっと、別の理由がある気がする。
そしてその理由に、律は気付いてる。
「……ねぇ律、私、泣いたりしないから、ちゃんと本当のことを言って欲しいの」
「本当のこと?」
「鈴さんは、律とやり直したいから会いに来たんじゃないの? お兄さんと別れて、律と一緒になりたいから……」
「な、んだよ……それ。そんなわけ……」
「誤魔化さなくていいよ。お願い、本当のことを、教えて?」
そう言いながら私は、律が否定してくれることを密かに期待してた。
違う、そんなわけ無いだろって言ってくれると思った。
だけど、状況は最悪だった。
「…………そうだ、琴里の言う通り……アイツは、兄貴と別れて、俺とやり直したいと言った。そんなこと、出来るわけねぇのにな」
私の考えていた通りの展開だったんだから。
「やっぱり、そうなんだね……」
律は、『そんなこと出来るわけない』って言うけど、決して不可能なんかじゃない。
鈴さんたちが離婚すれば、私と律が別れれば、二人が一緒になれないことなんてないんだ。
でも律は優しいから、きっと私を選んでくれる。
私が嫌いにならない限り、私と律が別れることはないと思う。
だけど、本当にそれでいいのだろうか。
心の底から私を好きでいてくれるのなら嬉しいけど、情で一緒に居られても、嬉しくない。
それに、私は思うんだ。
律は……本当は鈴さんとやり直したいって思ってるんじゃないかって。
私に『好き』って言ってくれないのは、心の中に、彼女がいるからなんじゃないかって。
「――ねぇ、律。」
「ん?」
「律は、私のこと、好き?」
「何だよ、急に」
「答えて? 好き?」
「ああ、そんなの当たり前だろ?」
「……うん、そうだよね」
こんな時ですら、『好き』とは言ってくれない律。
言葉に拘りすぎても仕方ないけど、今この時だけは、『好き』だと言って欲しかったのに。
「琴里、不安にさせて悪かったと思ってる。鈴と兄貴のことは、近いうちに片付くと思うから……少しだけ待ってて欲しい。正直関わりたくはねぇけど一応家族のことだから、状況を知っちまった今、見て見ぬふりは出来ねぇんだ。本当にごめんな」
「ううん、私の方こそごめんね。大丈夫、私は、律を信じてるから……」
「ああ、ありがとな」
そう言って私を抱き締めてくれる律。
納得したように振舞ったけど、本当は嘘。
私は密かに決意していたの。
律から離れようって。
だけど、実際は違った。
律じゃなくてお兄さんを選んだくせに、想ってくれてた律を傷付けたくせに、自分の都合で会いに来て、私や律の仲を壊そうとしてる。
そんな彼女が、私はたまらなく嫌いだ。
「……ねぇ律、鈴さんは……どうして律に会いに来るの? ずっと会ってなかったのに、どうして今になって来るの?」
「……鈴と兄貴は、ここ半年くらい前から色々揉めてるらしい。まあ、兄貴の女遊びが原因らしいけどな」
それで鈴さんは、律にどうして欲しいのだろうか。
私にはそれだけが理由で会いに来てるんじゃない気がする。
もっと、別の理由がある気がする。
そしてその理由に、律は気付いてる。
「……ねぇ律、私、泣いたりしないから、ちゃんと本当のことを言って欲しいの」
「本当のこと?」
「鈴さんは、律とやり直したいから会いに来たんじゃないの? お兄さんと別れて、律と一緒になりたいから……」
「な、んだよ……それ。そんなわけ……」
「誤魔化さなくていいよ。お願い、本当のことを、教えて?」
そう言いながら私は、律が否定してくれることを密かに期待してた。
違う、そんなわけ無いだろって言ってくれると思った。
だけど、状況は最悪だった。
「…………そうだ、琴里の言う通り……アイツは、兄貴と別れて、俺とやり直したいと言った。そんなこと、出来るわけねぇのにな」
私の考えていた通りの展開だったんだから。
「やっぱり、そうなんだね……」
律は、『そんなこと出来るわけない』って言うけど、決して不可能なんかじゃない。
鈴さんたちが離婚すれば、私と律が別れれば、二人が一緒になれないことなんてないんだ。
でも律は優しいから、きっと私を選んでくれる。
私が嫌いにならない限り、私と律が別れることはないと思う。
だけど、本当にそれでいいのだろうか。
心の底から私を好きでいてくれるのなら嬉しいけど、情で一緒に居られても、嬉しくない。
それに、私は思うんだ。
律は……本当は鈴さんとやり直したいって思ってるんじゃないかって。
私に『好き』って言ってくれないのは、心の中に、彼女がいるからなんじゃないかって。
「――ねぇ、律。」
「ん?」
「律は、私のこと、好き?」
「何だよ、急に」
「答えて? 好き?」
「ああ、そんなの当たり前だろ?」
「……うん、そうだよね」
こんな時ですら、『好き』とは言ってくれない律。
言葉に拘りすぎても仕方ないけど、今この時だけは、『好き』だと言って欲しかったのに。
「琴里、不安にさせて悪かったと思ってる。鈴と兄貴のことは、近いうちに片付くと思うから……少しだけ待ってて欲しい。正直関わりたくはねぇけど一応家族のことだから、状況を知っちまった今、見て見ぬふりは出来ねぇんだ。本当にごめんな」
「ううん、私の方こそごめんね。大丈夫、私は、律を信じてるから……」
「ああ、ありがとな」
そう言って私を抱き締めてくれる律。
納得したように振舞ったけど、本当は嘘。
私は密かに決意していたの。
律から離れようって。