私がこの世で一番大好きな人
 唇に何か当たる。

 驚いて目を開けると、彼の黒い瞳と視線が合う。

 何かは彼の唇だったみたい。
 これが所謂キスっていうやつだよね?

 認識すると恥ずかしくなって顔を逸らしてしまう。


「ふふ、顔真っ赤だけど、恥ずかしくなっちゃったの?」

「……だって、あなたがいきなり、……キスなんてするから」

「そんな可愛い反応されたら、色んな過程飛ばして、今すぐここから連れ出したくなる」

「……私は、それでもいいよ?」


 彼の顔を見て言うと、彼は自分の顔を片手で覆う。


「リーベが可愛すぎる」


 なんだか悶えている。
 どうしたの?と尋ねようとすると、彼は私を優しげに目を細めて見る。


「リーベがそう言ってくれるのは嬉しいけど、それじゃあ駄目なんだ」

「どうして?」

「ちゃんと段階を踏まないと、またあいつが君に近づいて、君を傷つけるかもしれないから」


 彼が顔を歪ませる。
 あいつとはオリバーのことだろう。

 ここから出た後、オリバーを私に近づけないために何やら彼は色々してくれているらしい。
 難しいことは私にはよくわからないけど、あともう少しの辛抱で、ここから出ることができて、この人と一緒にいられるようになる。

 それだけで私はすごく幸せに感じる。
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