紫陽花が泣く頃に


「……っ、みんな嫌い……。小暮も嫌い……っ」 


なんで、誰にも愛されてない私がここにいるの?

みんなが必要としてるのは美憂なのに、なんで?

ぽたぽたと絶え間なく流れているのは雨だけじゃない。ずっと溜め込んでいた気持ちが爆発して、涙がとまらない。


「嫌いでもいいよ。それでもいいから……今はひとりでいるな」

子供みたいに泣く私を見て、小暮はもう一度傘を傾けてきた。

「……う、……ううっ」

私は力なく、小暮の胸に顔を埋めた。泣きじゃくる私を受け止めるように、彼は優しく抱きしめてくれた。

その温もりにひどく安心して〝ここにいてもいい〟と言われている気がした。

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