推し一筋なので彼氏はいりません



「俺の話?」


「佐山くん。」


私が若干イライラし始めた時、それを見計らったかのように佐山先輩がやってきた。

よかった。やっとこれでこの気持ち悪い会話から解放される!


「菅野さんがいつもより来るのが遅いと思ってたら、ここで絡まれてるって耳にしたから見に来たんだけど。」


「絡まれてるだなんてそんな……。
私たちは少し話してただけで。ね?」


「まあ、はい。」


暴力とかはなかったし、確かに話してただけというのは事実だ。


「そっか。
でも俺、朝の菅野さんとの時間は毎日楽しみにしてるから、そろそろいいかな?」


「うん、ごめんね。」


え、いいの?引き下がっちゃうの?
そこはグイグイ行っていいよ?
別に私は先輩との朝の時間を楽しみにしてるってわけじゃないし。


「あ、それと、菅野さんが遥斗さんを好きなのは俺もよくわかってるし、遥斗さんより自分が魅力的でないのも自覚してる。
遥斗さんってとても素敵な人だからね。

何回断られても諦められないのは俺の方だし、あまり菅野さん困らせないでね。」


その言葉に全員が大人しく頷いたのをみて、先輩は私を連れて私の教室へと向かう。


やばい。推しを褒められて素直にうれしい。

コラボカフェのときもそうだったけど、二次元の人物をちゃんとひとりの人として見てるところに関しては、先輩のことが好きだ。


あ、そういえば私もさっき先輩のこと悪く?言ってたのかもしれない。
あの人たちのこと言えないな。

ごめんなさい、先輩。
先輩は十分素敵な人だと思います。

恋愛的な気持ちは一切ないけど。


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