宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと

1*好きな人

 花宮中学校、1年2組の教室。

 今は6月。
 ほどよい暖かさで気持ちのよい日。

 休み時間、廊下側の一番前にある私の席で、葵ちゃんと話をしていた。

「ねぇ、知ってる?」

 葵ちゃんがこっそり私にささやく。

「なになに?」

 ヒミツの話かな?

 葵ちゃんが顔を近づけてきた。

「これ、お姉ちゃんから聞いた話なんだけど。この街にね、好きな人と行くと両思いになって、結ばれる場所があるんだって! でもね、どうして結ばれるのか、周りの人は分からないらしいよ」

「何それ、不思議!」

 葵ちゃんから聞いた噂話、結ばれる理由は分からないらしい。
 あいまいで、なんだかウソっぽい。

 でも、ずっと大好きな男の子の顔が、頭の中にはっきり浮かぶ。

 もしも彼と一緒に行けば、両想いになれちゃうのかな?って。そう考えながら一番後ろの窓側の席に座っている彼をちらり。

 栗色をした彼の髪の毛が、窓から入ってくる風に当たり、さらさら揺れていた。

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