覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
 


 帰り道、突然の小雨が降った。

「あ」
と衣茉は星が見えるのに、ぽつぽつ降ってくる空を見上げ、足を止める。

 少し笑って言った。

「私、雨男を探してたんです」

 いやそう。
 あれはなんだったんだ……という顔を八尋がする。

「実はその――

 課長と相合傘してみたくて」

 照れたように衣茉がそう言うと、八尋が、
「傘は今、家に置いてるな」
と言う。

 そうですよね、いきなり降りましたもんね、と苦笑いした衣茉に八尋は言った。

「だから……、うちに来ないか?」

「えっ?」
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