覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
 八尋に抱っこされていた真澄が飛び降り、無言で秋馬の元に走っていく。

「おっ、真澄~っ。
 相変わらず、八尋さんに似て可愛いなあ」

 ……私にではないのですね、と衣茉は、すぐに秋馬に抱っこされている真澄を見る。

 誰に似たのか、真澄はイケメン好きで。

 秋馬も吉行も、雨男の玖村も真澄は大好きだ。

 書店にあふれる本の匂いを嗅ぎながら衣茉は言う。

「いろんな思い出がありますよね、この街」

「タヌキの森とあの周辺にもたくさんあるけどな」

「タヌキの里ですよ?」
と衣茉は訂正する。

 チヨは八尋があまりにもタヌキの里と店名を言い間違えるので。

 ついに店の名をタヌキの里にしたのだ。

 名前が店の雰囲気に合っていると、ますます繁盛しているようだった。
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