覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
「そうですかね?」

「ひとりで恋のドキドキが感じられるのか?

 俺が行ってやろう。
 日曜か」

「土曜です」

「土曜か。

 あ、待てよ。
 土曜は実家に帰れと言われていたな。

 すぐに用事を済ませられれば行けるが」

「じゃあ、駅で待ってます」
と言う衣茉に、ふと、不安になって訊いてみた。

「……もし、俺が行かなかったら?」

 衣茉は、自分の言葉のせいで、誰かを連れていった方が恋のドキドキを感じやすい、と思ってしまっている。

 上手くいかない原稿に追い詰められているこいつはなんでもしそうだと不安になったのだ。
< 85 / 438 >

この作品をシェア

pagetop