完璧生徒会長はとろける甘さの恋を描きたい
【第7章】
○十日ほどあと、朝、通学路
○すっかり秋めいてきた

千和(だいぶ葉っぱも色づいてきたなぁ)
<紅葉の街路灯を見上げる千和>

千和(文化祭ももう二週間後……)
<綺麗なものを見て、目を細めている>

晴陽「どうした? 千和」
<隣にいた晴陽が声をかけてくる>

千和「あ! 紅葉が綺麗だなって見てたの」
<視線を晴陽に移し、穏やかに言う>

晴陽「そう。千和は風流だなぁ」
<穏やかな笑み>

千和「だって綺麗なものは見ていたいじゃない」

○繋がれた二人の手

千和(晴陽と付き合うのももうだいぶ慣れたし)
<穏やかな様子>

千和(距離も近付いた気がするな)
<嬉しそう>

晴陽「そうだ、千和。今日の生徒会なんだけど」
<歩くうちに晴陽が切り出す>
<和やかな会話>

千和「うん?」

晴陽「俺、ちょっと先生たちとの会議に出席しないとなんだ」

晴陽「だから役員たちと作業進めててくれる?」

千和「うん! わかった」

千和(役員としても、だいぶ慣れてきたかな)
<嬉しくなっている>

千和(少しはお役に立ててるといいけど)

晴陽「あと、ごめん、帰りも別かも」
<すまなさそう>

千和「そうなんだ? 会議、時間かかる?」
<軽い気持ちで聞く>

晴陽「いや、漫画のほうでちょっとトラブっててさ。緊急の呼び出し受けちまった」
<気まずそう>

千和「え……、大丈夫?」
<心配する>

晴陽「ああ。ちょっと修正が多くなりそうだけどな」
<笑ってみせる>

晴陽「そんなわけで、編集部に行ってくる」

千和「わかった。無理しないでね」
<笑顔で励ます>

晴陽「ありがと。若葉さんが迎えに来てくれるし、帰りも送ってくれるみたいだから大丈夫だよ」
<なんの気なしに話す>

千和「……そっか。それなら安心だね!」
<ちょっと複雑な気持ち>
<笑顔を作って、晴陽に向ける>

○校門

晴陽「お、もう着くな。じゃ、今日も頑張れよ」
<軽く千和の頬にキスをする>

千和「ひゃ! ちょ、ちょっと! 校門だよ」
<真っ赤になり、怒る>

晴陽「構うか。じゃあな」
<しれっと言い、手を上げて去っていく>

千和「……うん。頑張ってね」
<ほんのり赤いまま、手を振る>

○近くの木陰

先輩女子1「……なに、あれ」
<見ていた先輩女子たち、気に入らないという様子>

先輩女子2「会長が甘いからって、デレデレしすぎじゃない?」

先輩女子1「いい加減、身のほど知ってもらったほうがいいかなぁ」

○昇降口

千和(若葉さん、かぁ……)
<靴を脱ぎ、靴箱に入れながら悶々>

千和(あの日、晴陽の家で会ってから、どうも考えるともやもやしちゃうな)

千和(付き合ってるわけはないけど、二人っきりって思うと……)

千和(私よりずっと付き合い長いんだし……)

千和(なんでこんなもやもやするんだろう)
<悶々とすることに悩んでいる>

○廊下

葉「あ、おはよう。降矢」
<昇降口から上がり、廊下で葉とバッタリ会う>
<通学バッグを肩に掛けた葉、にこやかに>

千和「煎条くん。おはよう」
<笑顔になり、挨拶>

葉「今日、一人?」
<連れ立って廊下を歩きながら、軽く聞く>

千和「あ、さっきまで、はる……会長と一緒だったよ」
<普通に言ってしまいそうになって、ハッとして言い直す>

葉「……そう」
<ちょっと暗い様子になる>

千和「?」
<不思議に思う>

葉「そうだ! 今日の計算作業、二人一組だよな」
<明るい顔に戻る>

千和「そうだったね」
<変な空気がなくなり、ほっとした>

葉「一緒にやらね?」

千和「うん、いいけど、芽生は?」

葉「ああ、芽生と組むのか。それじゃ……」
<ちょっと誤解した>

千和「あ、そうじゃなくて。煎条くんと芽生が一緒なんじゃないの? って」
<誤解されたと知って、訂正>

葉「……芽生はそんな気、ないよ」
<軽くうつむき、暗い様子になる>

千和「どうして?」
<不思議に思う>

葉「俺のこと、もう嫌いになっただろうからさ」
<辛そうな顔>

千和(『もう』? ってことは……昔は違ったってこと?)
<引っかかる>

葉「だから気にしなくていいって! 俺は降矢とやりたいんだよ」
<ぱっと明るい顔になり、優しい顔で言う>

千和「そう……? じゃあ一緒にやろうか」
<腑に落ちないけれど、笑顔になって言う>

葉「やった! じゃ、放課後待ってるな!」
<嬉しそうに声を上げる>

千和「うん、よろしくね」

○放課後、廊下

千和(ああ、遅くなっちゃった!)
<急いで廊下をゆく千和>
<焦っている>

千和(日直が長引くなんて)

千和(もう生徒会の作業、はじまっちゃってるよね?)

千和(怒られないといいけど……)

○生徒会室前

千和「遅れてすみ、……!」
<声を掛けながらドアに手をかけたところで、中の様子が見えて、ハッとする>

○室内
○葉と芽生が言い合いをしていた

葉「なんだよ、いつも突っかかってきやがって!」
<気に入らないという顔>

芽生「そっちこそ、なんでそんな歪んだ解釈するの!? 私はただ、こっちのほうがいいって……」
<不快そうな顔>

葉「俺の勝手だろ!? 口出されたいところじゃないんだよ!」

芽生「……っ、私にはなにも言われたくないってこと!?」
<苦しそうな表情>

葉「そうじゃねぇよ! でも……」
<もどかしそう>

○ドアの外

千和(え、え、なに……、言い合い!?)
<おろおろしている千和>

千和(芽生があんな顔してるの……、初めて見た……)

○室内

芽生「もういいよ! 葉にとって、私は迷惑でしかないんだよね!」
<泣きそうな顔で言い、去ろうとする>

葉「芽生! 聞けって!」
<必死な様子>

芽生「聞きたくない! ……っ!」
<バッと身をひるがえして、ドアを開けた>
<千和がそこにいたことを知って、目を見開き、固まる>

千和「……あ」
<突然のことに、呆然としてしまう>

芽生「……っ」
<くちびるを噛みしめ、横をすり抜けて駆けていってしまう>

千和「芽生……」
<呆然と見送ってしまう>

千和(ど、どうしよう……追いかけたほうがいいよね)
<おろおろし、少し考える>

千和「め……」
<追いかけることにして、呼ぼうとしたとき>

○先輩女子たちの声がかかった

先輩女子1「降矢さん? ちょっといい?」
<先輩女子たちが、嫌な顔をして寄ってくるところ>

千和「……!」
<足を止め、ぎくっとする>

先輩女子2「遅刻してくるなんて、後輩のくせにいい度胸じゃない」
<不快そうに>

千和「す、すみません! 日直が長引いて……」
<恐れつつも謝る>

先輩女子1「あんたがトロいだけでしょ」
<上からの態度で罵ってくる>

先輩女子2「なに言い訳してんのよ」

千和「そんなふうに……」
<ちょっと理不尽に思ってしまう>

先輩女子1「会長の彼女だから、なにしても許されると思ってるんでしょ」
<上から目線で千和を馬鹿にするように>

先輩女子2「ちょっと傲慢なんじゃない?」

千和「そんな……っ!」
<ショックを受ける>

先輩女子1「いい加減気付きなさいよ。あんた、会長には不釣り合いなのよ」
<千和を睨んで>

先輩女子2「仕事もトロくて、なんにもできなくて、別にかわいくもないし」

先輩女子1「身のほどを知ってほしいわね」

千和「……っ、先輩たちに……、言われることじゃないです」
<うつむき、ぐっとこぶしを握る>

先輩女子1「は? なんて言ったの?」
<不快そうに顔をゆがめる>

千和「私が不釣り合いなのはわかってます! でも誰と付き合うかは晴陽が決めることです! ほかのひとにとやかく言われることじゃありません!」
<バッと顔を上げ、真っ直ぐに見て言い放つ>

先輩女子2「……っ、ずいぶんえらくなったものね!」
<勢いに押されて、一瞬詰まる>
<吐き捨てるように言う>

先輩女子1「会長のことならなんでも知ってるヅラするわけ!?」

先輩女子2「もうちょっとわからせてあげたほうがい……」

○晴陽の低い声

晴陽「なにをわからせるって?」
<晴陽の据わった声がする>

全員「……!?」
<その場の全員、息を呑み、振り返る>

○晴陽が立っていた

晴陽「千和になにをするつもりだったんだ?」
<怒りが目の奥にある>

千和「晴陽……!」
<張り詰めた顔で呼ぶ>
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