乙女は今日も夢を見る

そうだよ…。
今までの観月くんが全部嘘だったなんて思えない。

おもちと仲良く遊ぶ観月くんの優しい笑顔。

学級委員だって、私が困ってたら自分から一緒にやってくれたし。

文化祭だって…おじいさんの家に行った時も…。

その瞬間。

『大丈夫?今、救急車呼んだからもう少し頑張って』

あの時の優しい声を思い出した。

そうだ、伝えないといけない。
あの日、私を励まして助けてくれたこと。
どれだけ心強く感じたか…。

「おもち、私、観月くんに伝えないといけないこといっぱいあるみたい。1人じゃ心細いから一緒に来てくれる…?」

「ニャー!」

腕に抱えたおもちが返事をするようにタイミングよく鳴き声をあげたことに思わずクスッと笑みがこぼれる。

よし…!観月くんに会いに行こう。

再度、ギュッとおもちを抱きしめると私は裏庭に向かって急いだのだった――。
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