捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「父上。それは竜王としての命令ですか? それでしたらお断りいたします」

 アレスの言葉が空から差し込む光のように私の心にしみわたる。抱きしめていた腕をといて竜王様との間に庇うように立ってくれた。

「お嬢様は魔道具を作る機械ではありません。受けるかどうかはこちらで判断いたします」
「アレス……しかしこれは国の問題でもあるんだ。だからこうして僕が来ているんだよ。王子なんだからわかるだろ?」
「それなら廃嫡してください。私はお嬢様の専属執事です。お嬢様の幸せが私の幸せです。それを奪うというなら容赦しません」

 張り詰めた空気が肌に突き刺さるようだ。
 でもアレスの言葉は泣きたくなるほど嬉しかった。竜王様からの申し出なのに廃嫡してもかまわないと、私を守ろうとしてくれている。

「参ったな……私はアレスに喧嘩を売りたいわけでもないし、ロザリアちゃんに無理強いをしたいわけでもないんだ。焦ってしまったようだな。ごめん」
「何か事情があるのですか?」

 竜王様の言葉が気になって、問いかけた。この国に住んでいるのだ、できる範囲でなら協力したい。

「もうひとりの王子、カイルの番が一ヶ月前から行方不明なんだ」

 それはまさしく国家を挙げて対応するべき大事件だった。
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