捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 ぱあっと視界が開けたように感じて、気力が湧きあがる。食欲もなくて弱っていた体に喝を入れスープを口に運んだ。やさしい味の液体はカラカラになった土に雨水が染み込むように、ボクの身体にゆきわたっていく。
 そこから取り戻すように食事を口にしていった。

「まあ、ウィル! 食欲が戻ったのね! さあ、さあ、たくさんお食べなさい」
「よし、それではロザリアを取り戻すための計画を開始しよう。ウィルバート上手くやるのだぞ」
「任せてください、ボクがちゃんとロザリアを大切にすればすぐに元通りになります」

 ボクは信じて疑わなかった。
 ロザリアに会ってボクが今度こそ愛情を示せば、前のように夫婦になれるのだと思っていた。実際に今まではほぼ全てのことが思い通りになってきたからだ。

 だから人生では取り返しのつかないものがあるなんて、知りもしなかった。
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