捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました

4話 誰にも愛されない妃


 卒業パーティーの日もウィルバート殿下がエスコートしたのは大輪の花のように着飾ったボニータだ。
 同性の私から見ても華やかで美しいのだから、ウィルバート殿下が心を奪われるのもわかる気がする。

 卒業パーティーは在校生である生徒会の副会長が主導で手配するものだった。ウィルバート殿下は放課後はボニータと帰ることが多かったので、当然のように準備は進んでいない。だからこっそりとウィルバート殿下からの指示だと言って私がすべて手配した。

 昨年もこなしたので勝手はわかっている。前年よりもステキな卒業パーティーにできるだろう。私はつつがなく卒業パーティーが進行しているのを確認してから、そっと出口に向かった。


 帰ろうと会場を後にしたところで、いつものようにアレスが出迎えてくれる。

「お嬢様、もうお帰りになりますか?」
「ええ、もう帰るわ。明日からは朝から妃教育だもの」
「かしこまりました。では馬車までご案内いたします。僭越ながらエスコートしてもよろしいですか?」
「もちろんよ。お願いするわ」

 ウィルバート殿下の卒業パーティーの采配に対する賛辞を背にして、アレスのエスコートに身をゆだねる。最初にあった頃より随分と背も伸びて逞しくなり、すっかり青年の姿へと成長を遂げていた。

 その日初めて受けたエスコートはとてもスマートで、添えた指先に感じるアレスの温もりが私の心まで温かくしてくれた。
 いつもより暗い馬車の中で月明かりを浴びるアレスは神秘的な空気をまとっていて、ずっと見つめていたかった。

< 19 / 239 >

この作品をシェア

pagetop