捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 覚醒とは古に取り込んだ竜の血が目覚めて、完全に掌握できた状態のことをいう。それ故に覚醒した竜人は星すらも破壊するほどの力を持つ。その力をコントロールできるほどの強靭な精神力がなければ覚醒できずに暴走してしまうのだ。
 父上の驚きも無理はない。竜人の中でも覚醒する者はわずかだし、自分自身ですらどこか現実味がない。

「ああ……覚醒しちゃったんじゃ、もう僕でも止められない……」
「そうだ、言い忘れてた。立太子の件は引き受ける。お嬢様がお望みだからな」
「それを今言うの!? わかったけどさ! 本当にアレスが一番自由だよね!?」

 窓ガラスに映った瞳が金色だったので、何度か瞬きをして元に戻した。こっちの方がお嬢様は好きなんだ。父上のお小言はスルーして、風魔法で王太子妃の部屋の屋根を吹き飛ばした。感覚が鋭くなったおかげでロザリアの居場所がミリ単位で把握できる。破片でロザリアが怪我をしないように瞬時に結界を張った。

 だけど障害物がなくなってハッキリと見えるようになったと思ったら、あのクソ王子がロザリアに跨っていた。一瞬切り刻もうかと思ったが、殺さない程度に吹き飛ばしておいた。

「父上、後は頼んだ」
「ああ、もう、わかった! 僕はサラに合流するから行っておいで。————己の番を取り戻せ」

 竜王としての父上に見送られて、愛しいロザリアのもとへと転移した。
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