捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 まるで感覚がないほど冷えた指先を固く握って、ウィルバート様に問いかける。
 これでも王太子妃の仕事は精一杯やってきたつもりだ。ウィルバート様の評判も悪くない。なのにそれすらも認められないというのだろうか。

「ふん、そんなことか。そもそもお前のような地味な女は私の妻にふさわしくない。頭脳は明晰だったがいつもいつも比較されて、極めつけは何でもわかっているというようなお前の冷めた目が嫌で嫌で仕方なかったんだ」

 え、それが理由でしたの……? ウィルバート様はもともと勉強があまりお好きでないようでしたし、学園ではボニータとほぼ毎日遊んでいらっしゃったから、差ができるのは当然よね。
 それに冷めた目と言われても……むしろ歩み寄ろうと必死だったのだけど。
 でも反論したら罵声が返ってくるだけだか、ここは沈黙いたしましょう。

「いいか、女は少し足りないくらいがちょうどいいのだ。それにな、ろくに人付き合いもできないような女が王太子妃など務まらんのだ!」
「人付き合いというのは、どういった意味でしょうか? 社交については失態を晒した覚えはございませんが」

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