捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました

8話 何も知らない王太子(ウィルバート視点)

     * * *



 やっとボクを縛り付けていた魔法誓約が条件を満たして役目を終えた。

 その知らせが王城中に広がるまでさほど時間はかからないだろう。ボクはそれを悠然と待っていればいいと急足で愛しいボニータの元へ向かっていた。

 ロザリアと魔法誓約をした際に、誓約書の写しを各部署に配布して正妃は誰なのか知らしめていた。あの時は立場に固執するようなロザリアが忌々しくて、余計に憎らしかった。

 でも誓約書に盛り込まれていたから、仕方なく各部署に通達を出して対応させたのだ。高級台紙に挟んで書庫へ保管したり、部門長の部屋の壁に額縁に入れて飾るようになっているから、灰になった魔法誓約書を見て事実に気がつくはずだ。

 ボクが執務室に戻ると、待っていたと言わんばかりにボニータが抱きついてきた。机の上には灰になった誓約書が置かれている。

「ウィル様、本当に離縁が成立したのね! 嬉しいわ……これでお腹の子も安心して育てられるわね」
「ああ、安心してくれ。これでボニータを妃にできる。これからは正々堂々とボクを支えて欲しい」

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