捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「お嬢様は……この瞳が気味悪くないのですか?」
「そんなわけないわ。むしろ綺麗だし何度見ても飽きないわよ。様々な色の瞳に金色が散りばめられてるのは素敵じゃない。じっくり見てみたいわ」

 すると突然アレスの真剣な眼差しが目の前にあらわれて、心臓がドックンと大きくうねる。心に感じた痛みなんて一瞬で吹き飛んでしまった。

「お嬢様。私の瞳ならいくら見つめても構いませんが、他の竜人のはダメです」

 急に立ち止まったアレスに両肩をつかまれて、鼻が触れてしまいそうな距離にアレスの整った顔がある。

 アレスは色合いこそ派手ではないけれど、その造形美はまるで神殿に飾られる神々の彫刻のようだった。くっきりとした二重の瞳は凛々しく、高くまっすぐに伸びる鼻梁にほどよい厚さの唇は艶めいている。

 ち、近いわっ!! 本当、不整脈になってしまうから早く離れてほしいのだけど!?

「わ、わかったわ! 他の人のは見ないから!」
「それなら結構です」

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