捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「……差し出がましいことをいたしました。申し訳ございません」
「ううん、ありがとう。アレスはいつもよく尽くしてくれているわ。それだけで充分よ」

 それならどうしてそんな悲しく微笑(わら)うんだ?
 どうしてその瞳はすべてを飲み込んで悟ったように遠くを見ているんだ?

 どうしたらロザリアは最初の(あの)頃のように笑ってくれるんだ?
 俺は間違えたのか? あの時に無理矢理にでも攫ってしまえばよかったのか?

 想いは募るばかりで、今では番なんて関係なくロザリアが愛しいんだ。どんな逆境でも前を向くその横顔が、憂いを隠した後ろ姿さえも、何もかもが愛しくてたまらない。

 貴女がこの手を取ってくれたなら、世界のすべてを敵に回しても守りぬくのに。

 それでも貴女がいばらの道を選ぶのなら、俺はどこまでも傍にいよう。決してひとりにしないから。決してひとりで泣かせないから。
 ロザリアの傍にいるためなら、俺の狂愛なんて押し込めてしまえばいい。

 この世界に貴女がいる。
 それだけで俺は充分だから。

 だからせめて傍にいさせて。
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