捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 怒りよりも先に全身を埋め尽くしたのは歓喜だ。
 俺の愛しいロザリア様が誰のものにもなっていない。誰かを受け入れたからと言ってこの想いは変わらないが、とにかく嬉しかった。

 しかしクソ王子の言い草は捨ておけない。

「ロザリア様、いくらなんでもこの仕打ちはあんまりです。ロザリア様が望むなら、私はいくらでも手を尽くして……」
「ありがとう、アレス。でもいいの。こうなるのではないかと思っていたのよ。でも先にボニータに子ができてしまったら世継ぎの問題で国が揺らぎかねないわね……」

 聡明なロザリア様は自分のことよりも国の行く末を心配されている。本当に思慮深く真面目な方だ。

「陛下と妃殿下にも相談して誓約書を作成しましょう。いらぬ争いを避けるためだもの、きっと許可してくださるわ」
「ええ、当然です。それならいっそのこと魔法誓約にしてはいかがでしょうか?」

 そこで俺は助言した。

 この約束が破られるなら、もういいだろう? こんなクソみたいな国から愛しいロザリア様を解放してくれ。

 そうしたら俺なしではいられないほど、尽くして甘やかして愛するんだ。

 次が最後だ。
 もしこれ以上ロザリア様を傷つけるなら、その時は俺が攫うから。


 だから俺だけのロザリア、もう泣かないで——
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