捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「それでお嬢様の笑顔が見られるなら、容易(たやす)いことです」

 そんな風に優しく微笑まれると、キュンと胸が締めつけられる。

「では販売戦略の目星はついてますが、念のため調査してまいります」
「ええ、気をつけてね。いってらっしゃい」

 扉に向かって歩くアレスに、カウンターの中から声をかけた。実家ではこうして見送るお母様を目にしてきたので、私にとっては自然な流れだ。
 アレスはピタリと動きを止めてゆっくりと振り返る。

「……もう一度お願いします」
「え?」
「今の、もう一度お願いします。見送りがこんなに嬉しいとは……思いませんでした」
「そう? いってらっしゃい、アレス」

 頬を染めて嬉しそうに微笑んで出ていったアレスが、ほんの少し可愛くみえた。



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