捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「それよりも貴方のお父様やお母様が心配されているでしょう?」
「父も母もはるか遠い場所にいて会うことは叶いませんし、旅の途中なので心配は無用です。この身体もあと二、三年経てば大きくなりますので必ずお役に立ってみせます!」

 少年はまっすぐに夜空の瞳を向けてくる。少年をひとり旅に出すなんて、ご両親はなにかご事情があるのかしら? あまり深入りしない方がよさそうだし、ここはお断りしましょう。

「……未成年を屋敷の従業員として雇うわけにはいかないわ」
「こう見えて成人の十五歳は超えております」
「嘘でしょう!?」

 思わず淑女らしくない声をあげてしまったけど、少年はどう見たって私よりも幼い。

「俺の一族は成長期がくれば一気に大きくなるんです。必要なら魔道具を使って調べてください。決して嘘は申しておりません」

 少年の意思は固いようで、何を言っても引く様子はない。この見た目が一族の特徴……つまり身体的遺伝というなら、彼にはどうしようもないことだ。

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