幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「落ち着け、ギュンター。」
興奮しているギュンターをユリウスがなだめる。
「仮に王妃が怪我をしたとして、ラーデマッハー大尉に過失がないのであれば、俺は彼女を処罰したりしない。約束する。」
ユリウスの言葉にギュンターは幾分落ち着きを取り戻し、
それから他の連絡事項をいくつか伝えた後、退出していった。

ギュンターが退出した後、
ユリウスはじばし物思いに耽っていた。
(ギュンターがあんなに感情的になったのは、ラーデマッハー大尉が原因か?)
(ただの部下だったら、あんなに必死になるだろうか。恋愛を避けていたあいつにも心境の変化があったのだろうか。)
ギュンターはユリウスの5つ年上の26歳だったが、
そんな年齢差など気にならないくらいユリウスにとっては心許せる友人だった。
2人の出会いはユリウスが帝王教育の一環として軍隊に入隊した時に遡り、
たまたま同じ班に配属されたことから仲良くなったのだ。

王城に勤める侍女たちかも抜群人気があるギュンターだったが、
今まで浮いた噂一つないのは、ギュンターのトラウマとなっている過去が原因だ。
ユリウスはその過去を知っているだけに、
親友にようやく新たな恋が芽生え始めたのではと
自分のことのように嬉しくなるのだった。
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