捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
第二部

1話 プロローグ



 ——どこにもいない。

 穏やかで優しい微笑みが。
 愛しげに私の名を呼ぶ声が。
 私を見つめる夜空の瞳が。
 いつも私を導いてくれる大きな手が、どこにもない。

「どこにいるの?」

 ねえ、アレス。
 私、ようやく知ったわ。

 テノールボイスの声も、夜空のような瞳も、大きな手の温もりも。
 とっくに私の半身になっていたのね。

 最愛の番を奪われそうになる竜人の気持ちが、どれほどの悲哀と激情を生むのか。

 喪失感? いいえ、そんな簡単なものじゃない。
 怒り? いいえ、そんな生やさしいものじゃない。

「私の番をどこにやったの?」
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