捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 行き交う人々は、獣の耳とふさふさの尻尾を振りながら歩いている。獣人を見慣れないと耳や尻尾に目がいってしまうものだ。

「お嬢様、あまり雄の獣人は見ないでください。気持ちはわかりますが、私が嫉妬で耐えられなくなります」
「あ、ごめんなさい! あのもふもふの耳と尻尾に思わず目がいってしまって……」
「承知しております。ではこの後は私だけにしてください」
「ご、ごめんなさい……」

 アレスの激情がにじむ夜空の瞳に見つめられて、なにを浮かれていたのだろうと我に返った。

 単純に獣人の耳と尻尾に興味津々なだけで、アレスの嫉妬心を煽りたいわけではない。
 なにより嫉妬に駆られたアレスがどうなるか、散々刻みつけられているので下手なことはしないようにしている。

 そこで途中で獣人変身セットという大人気のお土産を購入して、三人とも獣の耳や尻尾をつけて移動することにした。
 これで他の獣人に目がいかないので、アレスが嫉妬することもないだろう。

 私はじっくりとアレスの獣人姿を堪能しながら、シトリン大商会の本店へと足を進めた。

 ハイレット様もなかなか似合っていて、恥ずかしそうに私たちの後についてきていた。山では調子が悪そうだったけれど、少し元気が出たみたいでひと安心だ。

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