捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「お前、名前は!? 兎族か!? 番はいるのか!?」
「え? あの、どういうことでしょう?」

 わけがわからないし、立て続けに質問されても答える前に状況が知りたい。私の夫から放たれる冷気に目の前の店員は気が付いていないようだ。

「お前はオレの運命だ! オレの番になってくれ!!」
「——は?」

 アレスが地獄の底から聞こえてきたような声で、私の代わりに答えた。背後から尋常じゃない冷気が漂い、素材に霜が降りはじめた。
 このままでは大変なことになる。私は慌てて話題を変えようとした。

「あの、私からも質問させてください。貴方は狼族でしょうか?」
「うん? オレか、そうだが……そうか、そんなにオレのことが知りたいのか! よし、教えてやる! オレはこのシリトン商会の会長、クリフだ! ちなみに親父が王弟の第八子だから血統も間違いない! どうだ、オレの番になるか!?」

 そう、ファステリア王国の王族は狼族だ。
 そんな高貴な方がここにいると思わなかったし、アレスの嫉妬心を抑えるためにこの格好をしているのに、さらに最悪な事態になるとは思ってもみなかった。

 この瞬間、私は一秒でも早くラクテウスに戻ろうと決意した。


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