捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 それにしても眠れない。まるで結婚式の前日みたいだわ。
 アレスと挙げた結婚式は本当に素晴らしかった。私の新しい人生に踏み出した場所で、アレスと愛を誓い合い、ふたりの人生を歩み始めることができた。

 二回目の結婚式の前日も嬉しすぎて眠れなかったと思い出す。そういえばあの時は散歩して気分転換したのだった。外の空気でも吸えば落ち着くかもしれない。

 深く眠っているアレスを起こすのは忍びなくて、そっとひとりでベッドから抜け出した。



 宿屋には広い中庭があり、薔薇のアーチや小さな噴水、ベンチが数カ所に置かれている。手入れされた庭を散歩して戻ればちょうどいいかもしれない。誰に会うかわからないので、簡易なワンピースに着替えて中庭に下りた。

 空を見上げると、上弦の月が西の山間近くに浮かんでいる。あまり遅くなりすぎないようにしようと、月光に照らされた花々を眺めながら噴水へと向かって歩いた。

 レッドベリルを見つけたらすぐにラクテウスに戻ろう。

 しばらくはゆっくりとしたい。ラクテウスで感じるゆったりとした時間が恋しい。
 いつもみたいにアレスの作った朝食を食べて、魔道具の開発をして、疲れたらお茶を飲んで、誰にも邪魔されずアレスと穏やかな時間を過ごしたい。

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