捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 ハイレット様はおもむろに立ち上がり、私に近づいてきた。

「これはどういうことですか?」

 私は努めて冷静に尋ねた。
 客人として招待された屋敷で、薬を盛られ魔封じの手枷をつけられるなんて尋常じゃない。

「どうもこうも、アレスはもうこの世にいないので、今後のことを話し合おうと思ったのですよ」
「そんなわけないわ。アレスがそんなに簡単に殺されるわけない」
「そうは言っても、今頃は毒を飲んで苦しんでいるか、魔力を封じられ帝国一の騎士団に囲まれているかのどちらかです。どう足掻いてもここで終わりですよ」

 ハイレット様の言葉が一瞬理解できなかった。

 アレスが毒を盛られた? 魔力を封じられて騎士に囲まれている?
 どうして……どうしてそんなことになっているの?

「言ったでしょう、最後の晩餐だと」

 ハイレット様は確かに最後の晩餐だからと、私たちがこの屋敷に来るように仕向けた。ということは、あの時点でアレスを亡き者にしようとしていたのか。

「貴女は私の妻になる運命だったのです」
「ふざけないで!」

 その時、バンッと大きな音を立てて、クリフ様が部屋に入ってきた。

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