捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 だけどこれだけの素材を取り扱うことができて、並べられている素材はどれも最適な状態だ。これほどの伝手と知識があり、保管するための手間を惜しまない店主はとても貴重なのだ。

 確かに店主の態度は接客向けではないけれど、敬意を払うべき相手なのはわかる。
 私はハイレット様に代わり、店主に話かけた。

「申し訳ありません。私たちはただ素材を探しているのです。ここまで素材を揃えられる人脈と、あらゆる素材の知識を持ち的確に管理できる方を他に知りません。どうかお力を貸していただけませんか?」
「……ふん、少しは話ができそうだな。あんたになら素材を売ってやる」
「ありがとうございます!」

 ハイレット様はポカンとしていたけれど、次第に真っ赤になって店から出ていってしまった。アレスがセラフィーナ様になにか囁くと、慌ててハイレット様を追いかけていく。
 アレスは私に黒い笑顔を向けて、こう言った。

「私は家族を大切にできる方が好きなのですと言っただけですよ。なにも嘘はついておりません」
「まあ、そうだったの」
「兄ちゃんは食えねえ奴だな。面白え夫婦だ」
「え、私たちが夫婦だと気付いていたのですか?」
「だって揃いの指輪をつけてるじゃねえか」

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