捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「ハイレット殿下、こちらが皇帝陛下より届いております。殿下がこちらにいらっしゃってからお渡しするよう申しつかっておりました」
「そうだったのか、父上からだな!」

 胸ポケットから取り出した手紙は、真紅の蝋封がされており間違いなく父上からのものだ。急いで封を開けて手紙を読み込んでいく。

 父の手紙には、すでに皇族の影がファステリアに入っており、邪魔者を消す準備を整えているそうだ。手練れを集めるのに時間を要したと書かれていた。

 さらにもうひとつ罠を張ったと記されており、そのおかげでスムーズにファステリアへ進めることになる。

「なるほど、そういう手筈か……ならばオークションの開催を待つまでもない。グラシア侯爵」
「はい、なにかお役に立てることがございますか?」

 グラシア侯爵は狡賢く強欲な男だ。私たちから恩恵があると思えば、間違いなく味方として動くはずだ。

「ああ、お前のところで採掘されるイーグルアイを、特別に私個人へ用意してくれ」
「それはかまいませんが、それなりに見返りがございませんと……」
「わかっている。これは父上からの伝言だ。近々オースティン伯爵が失脚するだろう。その際に運輸業の利権が宙に浮くそうだ。ここまで言えばわかるな?」

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