夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
「……何かあった?」



さっきまでの元気がすっかり身を潜め。

困った笑みに,悲しそうな声色。

その持ち主が発した言葉に,俺は「え」と戸惑いに声を出した。




「まるで,私を待っていたみたいだったから」



まるで,なんて敢えて曖昧にするその人は。

やっぱりとてもずるい性質を持っているようで。

分かっているのかいないのか,その三文字が

ーまるで俺がそうすることを望んでいないみたいだ。

なんて,その人以上に濁した感想を俺に抱かせる。



「何もない。いつも通りだよ」

「そっか,いつも通りか。それは……問題だね」



その人はブランコの上でしゃがむ。

俺の言葉をそよ風のように軽く拾い上げ,重たく飲み込むようにふと息を溢した。

足場が不安定に揺れるのを気にせずに,彼女は僕と視線を合わせ,目を細めて微笑む。



「ねぇ,今何年生? 学校,楽しい?」

「2年。そこそこに」

「家族は? こんな時間に出歩いて,心配しないの? それとも男の子だから?」

「この時間に一人は流石に男関係ないんじゃないかな。でも心配はしない。させないようにこっそり来てる」



弟と,着地する場所に近いお母さんは気付く可能性もあるけど。



「そっか。私一人っ子だからその辺分かんなかった。……心配させないよりも,君がその人の思う通りの安全な場所にいる方が重要だよ」
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