† of Sword~剣の粛正
なら、あれは夢ではなく、現実。

しかし、現実なら、いったいどうして私は、まばたきの間にまったく違う空間にいるのだろう。

溜め息とともに、手の甲を目の上に乗せた。

ふと、気が付いて、

「メガネ……」

目を開く。

明瞭に、小さなシミや、板の継ぎ目まで見える、白い天井。

ベッドの周囲を仕切っているカーテンレールを留めているビスまで、見ることができる。

裸眼で。

メガネがなければ本を読むこともできなかった私が、裸眼で、数メートル先の天井、その細部までをも。

見えることが悪いとは言わない、だけど――

「そっか」

気付くのがふとしたものなら、思い出したのもふとしたものだった。

彼は言っていただろう。再構築に不必要なものは、加算されない。

場所が、どうあれ。

あの彼も、あの空間も、あの時間も、夢ではないようだ。

そう、だからすべては現実。

私が死んだのは中学生最後の十二月。

雪になりきれなかった冷たい雨の降る日だった。





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