転生公爵令嬢のイチオシ!
「では…」

早苗様が立ち上がりコホンと喉を整える。

「お疲れ様です!!」
「お疲れ様です!!」
「お疲れ様です!!」

「ッ!!?」

私と里英ちゃんも立ち上がり、今日のお辞儀の角度は30度で敬礼。

「イチオシ社、社訓その1!」

「お客様への誠実さ、そして常に笑顔と…」
「お客様への誠実さ、そして常に笑顔と…」
「お客様への誠実さ、そして常に笑顔と…」

そしてそれぞれ何事もなかったかの如く着席する。

「さて、人払いもしていただいています。何でも話して大丈夫ですよ」

「…ふっ!ははははっ!!」

レイ様がお腹を抱えて笑っている。
ツボに入ったようだ。

今日はレイ様に向かって女子達3人はお辞儀をした。
レイ様は驚き、目を見開いていた。

「はーっ!苦しいっ!これいつもお茶会の時に?」

こんなに爆笑するレイ様は初めて見るわ!
レアレイ様!

「ええ。毎回ではありませんが、ほぼ」

早苗様がキリリと答える。

「クククッ!こんなに笑ったの久しぶりだよ。イチオシ堂の先代も喜んでいると思うよ。……皆、ありがとう」

嬉しそうに笑いながらも目頭を押さえるレイ様。
ううん、宮本専務ね。

「おふたりにまたお会いできて嬉しいです」

「宮本専務…」

里英ちゃんも少し涙ぐむ。

「私達もですわ」

早苗様も懐かしむような顔をする。
私はもう言葉が出ないほど泣いている。

「…さぁ皆様。懐かしいお茶とお菓子をいただきましょう!」

早苗様が明るく声を出して雰囲気を変えた。
今日のお茶とお菓子はレイ様が用意してくれた。

「緑茶なんてよく手に入りましたね!美味しい!」

里英ちゃんの嬉しそうな顔!

「本当に懐かしいわ!それにお団子も」

早苗様もお団子の串を手に取り頬張る。

「大福も本当に美味しい!レイ様ありがとうございます」

私は大好きな大福から食べる。

「緑茶はストライブ侯爵家での仕事の関係で手に入ったんだ。探していた他の和菓子の材料も少しずつ揃ってきたよ」

「誰のために探してたんですかぁ?」

里英ちゃんがニヤニヤしながら聞く。

「あの奥手だった宮本専務がこんなに積極的な人になるとは」

早苗様もニヤニヤ。

「…まぁ、もう後悔はしないように気持ちを伝えたいんだよ」

困った顔で笑う宮本専務。
ふたりもそうですねとまた少ししんみりしてしまった。

「やっぱり宮本専務は和菓子職人なんですね!」

明るい雰囲気に戻そう!
もちろん今日の大福とお団子も宮本専務が作ってくれた。
作っているところを見たいわ!

「小豆は何年も前から手に入れたくて探していたんだよ。でもメリアーナを見かけた頃からだったかな。今思えば」

「えっ!? 何年も前から?」

私は顔が赤くなる。
そして里英ちゃんと早苗様がニヤニヤする。

「あとは材料があると作りたくなっちゃうね」

「それは分かります!」

里英ちゃんは前世の知識でこの国にない物を開発することに力を入れている。
学園祭では大活躍だった。
ダイエット商品としても売り出しているらしい。

「アレックスが王宮騎士団の訓練にも使いたいと言っていたよ。他にも何があるか聞きたいみたいだよ」

「まあ!もちろんですわ!」

「良かった。アレックスに伝えておくね」

ヴァリテ家は恋愛主義で婚約者は家が決めることはないそうだ。
そしてアレックス様に婚約者はまだいない。
一緒にいて楽しい人が好みだそうだ。
『マクラナ嬢は可愛いし、なんだか楽しそうだな』と言っていたとレイ様から聞いた。

レイ様は嬉しそうだわ。
早苗様もクスリと笑っている。

「あと!こんな計画も立てていまして…。ぜひ、宮本専務も協力してもらえませんか?知恵を貸してください!ストライブ侯爵家の力が必要な壮大な計画なんです!」

「どんな計画?」

里英ちゃんは楽しそうにレイ様に自分の考えを話している。

「ああ、それに関しては私も前々から構想を練っていてね。専門家と進めている事業が……」

何やら物作りが好きなふたりで考えがあるらしい。
今度は何ができるのかしら。

それからは学園祭の脱出ゲームの話や懐かしいイチオシ社の話をして楽しいお茶会がお開きとなった。
ということはそろそろ…。

「サナエラ嬢!」

お兄様だ。

最近は早苗様が来ていると帰り際に声を掛けてくるお兄様。
鈍い私でも気づいちゃうわ。
皆も分かっているのでふたりから離れて歩く。

「何を話しているのかしらね?」

こっそりと里英ちゃんが私に聞く。

「フフッ。そうね、何かしら? でもふたりとも笑っているわね」

最初は不思議そうにしていた早苗様だけど、最近はソワソワしてお兄様を待っているようにも見える。

そんな皆の芽生え始めた恋にワクワクしながらレイ様と手を繋いで歩いた。



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