オムライスは甘口で

 美雨は説教だけは一丁前の課長が退社したのを確認すると、客先の担当者に電話を掛けた。

「スマートエンジンの石黒です。はい、例のソフトの件でお電話させていただきました」

 不具合の詳細を聞くと、修正は軽微なもので、ソフトウェアそのものを変更しなくても設定ファイルの諸元値を変更すれば対応できそうだった。
 
 変更の仕方を口頭で教え、後日変更手順書を送付するということでようやく話がついた。
 定時で退社した課長と異なり、美雨はこの日夜の九時頃まで残業した。

「さて、帰るかな……」

 美雨以外誰もいない静かなオフィスでひとり呟く。
 帰り支度を始めながら、今日の夕飯は何にしようかと考えを巡らせていく。

 家に帰ってから作る?
 お弁当をテイクアウトする?
 一人で居酒屋?

(ううん。どれも違う)

 頭の中の選択肢を、どれも心が否定する。

 ……こんな夜は、オムライスに限る!

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