Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
 そのあと、水原に会社近くのダイニングバーに連れていかれた。
 ちらりと時計を見ると18時45分。もうすぐ、神流さんと浅間さんがホテルで会う時間だ。

 席に座って注文をする前、私は口を開いた。

「水原。私、やっぱり神流さんが好き。彼女がいるってわかってても、簡単には諦められなくて。だから、ごめん」

 額をテーブルにくっつけて謝る。
 水原の低い声が頭から降って来た。

「普通さ、飲んでから言わない?」
「お酒飲んでから言うの、ちょっと違うかなって」
「はぁ……変なところ律儀で嫌になるわ」
「ごめん」

 私が言うと水原は表情を崩す。そして頭をガシガシと掻いて言った。

「本当に神流さんとは付き合わないのか?」
「浅間さんとうまくいってるなら、邪魔はしたくないから」

「あの時は見たことと聞いたことを直接芦川にも伝えたけど……。俺、ずっと変だなって思ってた。いくら社長の娘だからって、神流さんが浅間さんを選ぶような浅はかな人間に思えないよ」

 でも実際にホテルで約束するなんて親しい間柄なのは間違いないだろう。

 水原ははぁ、と息を吐いてビールを二つ頼んでくれる。
 それから、水原も頭をさげた。

「ごめん」
「なんで水原まで謝るのよ」

「俺、あのとき、もしかしたら芦川と神流さんが付き合ってるんじゃないかって疑ってた。だから神流さんと浅間さんが一緒にいるのを見て、わざわざ芦川に伝えた。それでもし付き合ってるなら別れてくれたら良いなって気持ちもあったんだ。最低だろ」

「聞いてなくても別れる時期が遅いか早いかの違いだったんだよ。だから謝らないで」

 水原を責める気は全然なかった。
 これは私と彼の問題だったから。
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