君が導き出してくれた私の世界

「じゃじゃじゃーん! そこのスーパーの福引抽選会でプラネタリウムのペアチケットが当たったの!」

「……へぇー」

凄い!と思う私とは違って、楓くんの反応は薄くて唯花ちゃんは機嫌を損ねてしまった。

「なにその明らかに興味なさそうな反応やめてくれる?」

「悪かったな」

「こんなロマンチックのかけらもないからモテないんだよ?」

「大きなお世話だ」

「乙女心が分からない葉山くんはさて置いて」

「おい」と小言を挟む楓くんをスルーして、唯花ちゃんは私にチケットを差し出した。

「これ、小春ちゃんにあげる!」

『唯花ちゃんは行かないの?』

手話で唯花ちゃんに問う。

「私はね、その日、彼氏と映画観に行く約束してるから行けないの。だから、小春ちゃんにあげる。誰か一緒に行って楽しんでおいで」

唯花ちゃんは仲良い友達が多いのに、それを私にくれるなんて、なんて優しいんだろう。

『ありがとう』

手話でお礼を伝え、唯花ちゃんからペアチケットを貰った。

「良かったな、小春」

楓くんに笑顔でコクリと頷いた。

貰ったペアチケットをよく見てみると、七夕イベントとの文字があり、綺麗な天の川が印刷されていた。

日付は、7月の第1日曜日。

場所は、病院でよく行っている隣町だ。

「唯花、彼氏さんが呼んでるよー!」

そこへ、クラスメイトの言葉で、私も一緒になってドア付近を見ると唯花ちゃんの彼氏さんがいた。

隣のクラスの子で、高1の時から2人は付き合っていて、みんなも知っている公認カップル。

「じゃあ、また後でね」と言い残し、唯花ちゃんは幸せな笑顔を浮かべて彼氏さんのところへ向かって行った。
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