【コンテスト作品】たこ焼き屋さんの秘密。


 そんなある時、私は郁の秘密を知ることになった。

 それは郁といつもようにデートをしていた時のことだった。



「郁、今日の夕飯ビーフシチューでいい?」

「いいよ。俺智世里の作るビーフシチュー大好きだし」

 郁の言葉に、私は「分かった。じゃあビーフシチューにするね」と微笑んだ。

「楽しみだな、ビーフシチュー。智世里の作るビーフシチュー、本当に美味いんだよな」

「ありがとう。そう言ってもらえると、作り甲斐があるよ」

「智世里は料理上手だからな」

 郁と手を繋ぎながら歩いていると、遠くから「ひったくりー!!」と叫び声が聞こえてくる。

「ん? ひったくり?」

 立ち止まって辺りを見回していると「捕まえてえ!!あの人ひったくりよおー!!」と走ってくる女性がいた。

「郁、あの人じゃない?!」

 自転車を漕いでくる帽子をかぶった男がこっちに向かって走ってくるのが見えた。
 すると郁は「アイツか」と呟くと、自転車を漕いでくる男の人の方へと歩いていく。

「えっ、郁?! 何してるの!危ないよ!」

「大丈夫大丈夫。俺に任せておけって」

 そう言った郁は次の瞬間、その自転車を倒して男の人を転ばせた。

「えっ!」
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