クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
運命の出会い
――ププププーッ!


「危ない!」


周囲に響き渡る、甲高くて不快なクラクションの音。
そして緊迫を纏(まと)った誰かの大きな声。

それらが鼓膜を揺らした瞬間、私、吉木和奏(よしきわかな)の体は勝手に動きだしていた。


間に合って!

こんなに必死に駆けたのは、小学校の徒競走以来だ。

途中でパンプスが脱げたけれど、もちろん気にしてはいられない。

あと三歩。三歩で届く。

手を伸ばし、目の前で立ちすくむ三歳くらいの男の子を抱きかかえて、勢いのままにアスファルトに転がった。


――キキキキーッ!

大きなブレーキ音とともに、ドォンという雷でも落ちたかのような轟音(ごうおん)がして、一気に周囲がざわつきだした。


「大丈夫か!?」
「誰か、救急車!」


いたるところから声が飛んでくる。


「ねぇ、お目々開けて?」


私の腕の中の男の子は、額から血を流し、反応してくれない。
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