クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
「ここに電話をください。私の携帯につながります」

「いえ、そんな」

「我慢に我慢を重ねて悪化させる患者さんがいるんです。吉木さんはそういうタイプな気がして。それに、いきなり失礼なことをしたお詫(わ)びです。それでは」


堀田先生は、あっという間に救急外来のほうへと走り去る。
私の手には、電話番号が走り書きされたメモが残った。


「当たってる、かも」


両親を亡くしてから、あれよりつらいことなどこの世にはないと、なんでも我慢しがちだ。

親戚にこれ以上迷惑をかけるわけにもいかず、頼れる人がいないのもあり、そうやって自分を鼓舞(こぶ)していないと心が折れてしまいそうなのだ。

それにしても、それをあんな短時間で見抜くとは。

救急車の中で、うめきもせずに耐えたからだろうか。

きっと彼は、私を母親と間違えて叱ってしまったことに罪悪感を抱いて、こんなに親切にしてくれるのだろう。

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