クールな救急医は囲い娶ったかりそめ妻に滾る溺愛を刻む【ドクター兄弟シリーズ】
不安と激痛のせいで涙がこぼれたそのとき、白いシャツ姿の背の高い男性が駆けつけてくれた。

長めの前髪をかき上げる彼の大きな黒目がちな目は、鋭い眼光で男の子を見つめる。


「この子が……」
「俺は救急医だ。任せろ」
「救急医?」


神さまがいてくれたようだ。
ようやく酸素が肺に入ってくる。

男性は、すぐさま男の子の瞳孔(どうこう)を確認し、脈をとり、呼吸を確認した。


「大丈夫だ、反応がある。だが、ここではなにもできない。すぐに治療を始めないとまずい」


手が血に染まるのも気にせずてきぱきと動く彼は、私も視界に入れた。


「あなたもケガをしているね」


彼は私の顔にかかる緩いパーマのかかった髪をよけ、ひりひりする右頬を診(み)たあと、右腕も確認。


「痛いよな。……それと、脚。少し触るよ」


男の子の安否で頭がいっぱいだった私は、自分の体の痛みなど二の次だった。

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