となりの席の読めない羽生くん
「カフェでも入る?」

美術館から出ると羽生が言った。
「あ、うん…」
「完全にデートコース…」と思いながら、葉月は羽生に付いてカフェに入った。

「結構おもしろかった。絵がでかくてびっくりしたし。」
「ねー!私も原画は初めて見たから大きくてびっくりした。あとね、デジタルかなって思ってたから、絵の具で描いてあったのも意外でびっくりだった!」
葉月はニコニコとした笑顔で興奮気味に話した。

「羽生くん、何か考えながら見てたよね。」
「ああ、うん。あのくらいビビッドな色のデザートソースとかおもしろいだろうな、とか、あの絵みたいにわざと平面ぽく見せる盛り付けありかもな…とか考えてた。」
「え、こんな時も料理のことばっかりなんだ。すごい料理バカ…」
葉月はアハハと笑った。
「でもその料理見てみたいかも。」
予想外の答えではあったが、羽生が展示を楽しんでいてくれたらしいことが嬉しかった。

今日のアイスティーは格別においしく感じる。
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