となりの席の読めない羽生くん
「葉月、ごめん待った?」
「ううん、私も今来たところ。」

日曜日、葉月が家の最寄り駅で待ち合わせをしていたのは、葉月よりも少し年上の男だった。
山下(やました) 翔馬(しょうま)・大学3年生の20歳。
葉月の彼氏だ。
翔馬は葉月が中学生の時に家庭教師として出会った。
高校受験が終わり家庭教師の契約も終わったが、葉月は翔馬とLIMEで連絡を取り合っていた。
そして、2ヶ月ほど前に翔馬から告白されて付き合うことになった。
「好き」か「嫌い」かで言ったら「どちらかと言えば好き」で、歳上の翔馬と話をしていて楽しいと思う気持ちもあったので、翔馬に押し切られるように付き合い始めた。
中学生の頃にも彼氏がいたことはあるが、歳上の彼氏は初めてだ。

「葉月が行きたいギャラリーって表参道だっけ?」
「うん。好きなデザイナーさんの個展なの。」
付き合い始めたばかりの彼氏がいるのに、クラスメイトの男子に純粋な人間性以上の興味は無い。

…はずである。
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