彼女の夫 【番外編】あり
3階に上がり、フロア全体を見渡しても彼女らしき姿は無い。

気のせい・・?
容姿が似ている別の女性、だったか。

まぁ、そうだよな。
そんなこと、あるはずがない。
たとえ本当に彼女だとしても、その隣には俺じゃない別の───。


分かっている。
でも・・。


俺は出発ロビーの椅子に力なく座り、諦めの悪い自分に苦笑した。

声が聞こえたような気がするだけで。
姿が見えたような気がするだけで。
まだこんなにも、気持ちが乱されるなんて。


「無理・・なんだな・・まだ」


1年経って、すぐそばにいないことで優先順位が変わっただけで、少しも彼女を忘れてなんていなかった。

一緒に過ごした時間を無かったことにできるわけでもなく、だからといってふたりの未来があるわけでもない。
もう、気の済むまで彼女に対する想いを抱えて生きるだけだ。


いつか・・。

いつか、この想いが何らかの形で昇華することを願った。

どんな形でもいい。
俺はどうなっても、彼女が傷つきさえしなければいいのだ。


「蒼・・愛してるよ」


そこにいない彼女に向かって、俺は想いを口にした。

そう、届くことのない想いを。



〜 番外編 Fin 〜


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