愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
『それを言う相手は俺じゃない。昔から家族で一番、母さんに無関心だったのは父さんだ』

(父さん相手に直接文句を言えというのか?)

冷たい父の目を思い出し、顔が強ばるのを感じた。

助言を求めたりお願いしたりすることはなんとかできても、批判するのは無理がある。

朝陽が黙り込むと、兄が煩わしそうな声で話を終らせようとする。

『できないなら、お前も俺のように母さんと距離を置けばいい』

「そんなことをすれば精神状態が悪化する」

『優先順位をつけろ。お前が一番守りたいものはなんだ?』

プツリと電話が切れて、朝陽は舌打ちした。

スマホをワークデスクに置き、肘をついて額を押さえる。

(もちろん成美が一番大事だ。だが母さんを見捨てられないだろ。また自殺を図るかもしれないのに)

「どうすればいいんだ……」

静かな部屋の中でため息をつくと、他に解決策がないか頭を悩ませた。

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