愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「あの、今日はこの後――」

予定があると断る前に梢が気づく。

「あれ? その服、なんかお洒落だね」

いつもは大量生産で有名な洋品店の安い服ばかりだが、今日はディープブルーのきれいな半袖ワンピースを着ている。

袖がふんわりと膨らんだデザインで、胸元とウエストにギャザーがあしらわれ、クラシカルで清楚な印象だ。

今日はこれから朝陽と食事の約束をしており、そのために母がタンス預金を崩してこの服を買ってくれた。

(お見合いの日に教えてもらえなかった話を聞きにいくだけなのに)

成美としては服を新調するほどではないと思っているのだが、母は娘の初デートだと意気込んでいる。

(お母さんがすごく嬉しそうで、お金がもったいないから買うのをやめようと言えなかった。デートじゃないと何度言っても耳に入らないみたいだし、期待されても困るのに)

いつもと服装が違うと気づいた梢にこの後の予定を問われた。

「知人と食事の約束をしているんです」

「いつも真っすぐ帰る成美が珍しい。知人って、もしかして男?」

「そうです」

深い意味のない質問だと思い、少しも照れず返事をすれば、梢が目を丸くした。

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