モノクロに君が咲く

 それどころかユイ先輩を任せても大丈夫だと思っていたくらいだ。なんだかんだ病気のことだって話したのだから、根っこの部分では信頼していたのかもしれない。

「ありがとうございます、沙那先輩」

「っ……」

「……本当に、ありがとうございます」

 もう長くない時のなかで、いったい何度、私は人にありがとうと言えるだろう。

 こうして本心で言葉を交わせる相手がいるのは素敵なことだ。けれど、大事にしたい、大切にしたいと思う相手が増えるほど、私は迷ってしまう。

 遠くない未来に消えゆく私が、明日が当たり前の人に関わっていいのかと。

 こうして親密に関われば関わったぶんだけ、いずれそれは棘となり、刃となり、心に拭いきれない傷を負わせてしまうのではないかと。

 ──鎖となって、まるで枷のように苦を縛り付けてしまうのではないかと。
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