モノクロに君が咲く

 なんとか無事に定期テストを終え、雪崩れ込むように夏休みへ突入した七月末。

 気温三十六度。相変わらず身をこんがりと焼き尽くすような暑さではあるものの、風があるぶん、いくらかはマシだと思えるような晴天の日。

 ──ユイ先輩との約束の日だ。

 薄青の空には、スポンジを叩いたような霞んだ雲がまばらに広がっている。

 絵として表現しやすくはありそうだけど、もう少し情緒的な写実さがほしいな、と生粋の絵描き脳が訴える。

 外を歩いていると、どうしても絵のことばかり考えてしまうのは悪い癖だ。

 先輩と待ち合わせをした学校の最寄り駅へ向かう最中、うーんと頭を悩ませていた私を横目で見ながら、隣を歩く愁が「姉ちゃんさあ」とぼそぼそ口を開く。

「本当に大丈夫なの」

「もー、大丈夫だって。朝からそれ八回目だよ、愁」

 同じく夏休み期間中の愁は、私がユイ先輩と出かけると知ると、わざわざ早起きして駅まで送りに来てくれた。

 それは素直にありがたいとして、この仏頂面はどうしたものか。

 おおかた、私と先輩がこうして時間を共にするのが気に食わないのだろうけれど。

「今日で最後だからね」
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