この手紙をキミへ
「ねぇ、おじいちゃんはどうしてカスミソウをプロポーズのお花に使ったの? 」

君江が途端に頬を染める。

「花言葉に由来しててね……いつもたくさんの幸福を有難う、これからも……二人でたくさんの幸せを積み重ねながらいつまでも互いへの感謝を忘れずに一緒に生きていこうって……カスミソウの花言葉は『幸福』そして『感謝』」

「……素敵。写真のおじいちゃんって角刈りで少し強面だったけど、優しくてちょっぴりロマンチストだったんだね」

唇を持ち上げた私を見ながら君江がクスクスと笑った。

「ののちゃんにもいつか誰かから素敵なお手紙届くといいねぇ……」

君江の何気ない一言に私はふと先ほどの手紙のことが頭をよぎった。

「あ……おばあちゃん、そういえば今日差出人不明の手紙が届いたの、見てくれる? 」

「え? 差出人が書いてないのかい? 宛名は? 」

私は鞄から手紙を取り出すと君江に手渡した。

「『この手紙をキミへ』って書いてあるんだよね」

その瞬間、祖母が驚いたような顔をして口元を覆った。

「ののちゃん、この手紙中身みてもいいかしら、おばあちゃんの知り合いかもしれないの」

「えっ? そうなの?!……勿論いいけど……」

祖母はすぐに手紙を開封すると中に入っていた便箋に視線を流していく。

「……あぁ……確かにこれは困ったことだね……ののちゃん、その机の引き出しから便箋とボールペンを取ってくれないかい? 」

「え? やっぱり知り合い? お返事を書く……ってこと? 」

「まだはっきりとは分からないけどね、少し確かめたいことがあって……」

君江は便箋にさらさらとペンを走らせると白い封筒に入れて私に手渡した。宛先には『この手紙をあなたへ』と記載がしてある。

「これ、どうしたらいいの? 」

「この手紙を図書館前の投函ボックスの上に立てかけておいて欲しいの。多分……取りに来てくれると思うんだけど……あと、もしまた同じ宛先の手紙が届いたら悪いんだけどおばあちゃんまで届けてくれるかしら? 」

「あ、うん……分かった」

(おばあちゃんの知り合いのキミって誰のことなんだろう……)

もうすこし詳しく聞こうかとも思ったが腕時計を見れば十九時前だ。私は「またくるね」と君江に告げると岐路についた。
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