オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
「…ありがたいお話なんですけど、実は最近、好きな人ができて」

「えっそうなの?」


店長が見開いた目をキラッと輝かせた。


「どんな人?なんの仕事してるの?」

「消防署に勤めてるんです」

「えっ素敵じゃない。歳はいくつ?」

「4つ上です」


食い気味な店長の質問にたじろぎつつ答える。

店長も他の女子に漏れずこういう話が好きなんだな。

私も人の恋バナを聞くのは好きだけど、自分が言うとなると照れくさい。


「告白はしないの?」

「まだそんなに親しいわけじゃないんです。
それにマンションの隣人なので、告白した後に気まずくなるのは嫌だし…」

「お隣さん?
すごいわねえ、そんなところから知り合うなんて。
今やアプリ婚なんてのがあるくらいなのに」


はは、と軽く笑ってみせたけど、まさかエレベーターに閉じ込められたのがきっかけだとは恥ずかしくて言えない。


「じゃあ、上手く言ったら教えてね」

「はい」


答えてはみたものの、彼にとって私はスイーツ友達でしかないだろう。

いや、友達というカテゴリに入れてもらっているのかどうかもわからない。

やっぱりお弁当なんて差し出がましかっただろうか。


今日は初めて翔太くんにお弁当を作って、仕事へ持っていってもらっている。

この前のカフェでも翔太くんがお金を出してくれたし、奢ってもらってばかりじゃ申し訳ないから、そのお礼になっているのなら嬉しいけど…

だいぶ頑張って作ったつもりだけど、口に合わなかったらどうしよう。

ちょっとドキドキする。



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